ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

竹取物語 / 第2場面

つまどひ

この場面の挿絵を見る
つまどひをもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

求婚者の中から五人の貴公子が残る。翁は姫に結婚を勧めるが、姫は五人にそれぞれ得がたい宝物を持ってくるよう難題を言いつける。

原文の一節を選ぶと、発音の読みと現代語を確認できます。読むだけでは音は出ません。どの読み方から始めても読了を記録できます。

表示設定

音声設定

竹取物語・第2場面0 / 130
原文の一節を選ぶか、「次の一節」で読み始めます。

原文・発音の読み・現代語

現代語で読む

世の男たちは、身分の高い者も低い者も、どうにかしてこのかぐや姫を、手に入れたい、見たいと、噂に聞いて、恋い慕って思い乱れる。その家の垣のそばや外にいる人でさえ、容易に見ることができないものを、夜は安らかな眠りも眠らず、闇の夜に出て行っても、〔垣に〕穴をほじり、あちこちからうかがい、垣間見ては思い乱れ合っていた。

その頃から、〔男が夜に女のもとへ通うことを〕よばいと言った。〔男たちは〕人のものとも思われない〔かぐや姫の〕ところに思い惑って通い歩いたが、何の甲斐もありそうに見えなかった。家の者たちは、言葉だけでも交わそうと〔手紙を〕言い送ったけれども、〔かぐや姫は〕何とも取り合わず、そばを離れない公達は、夜を明かし日を暮らす人が多かった。彼らが通ってくるのは、益のない行き来だということになって、来なくなってしまった。

その中に、それでも〔求婚を〕言い続けたのは、色好みと言われる限りの、五人〔の男〕で、思いを止める時もなく、夜も昼も通って来た。その名は、一人は石作皇子、一人は車持皇子、一人は右大臣阿倍の御主人、一人は大納言大伴の御行、一人は中納言石上の麻呂、ただこの人々であった。

世の中に大勢いる人をでさえ、少し器量がよいと聞くと、お目にかかりたいと思う人々であったので、かぐや姫をお目にかかりたいと思って、物も食べずに思い続けて、あの〔翁の〕家に行って、騒ぎ歩いたけれども、甲斐がありそうにもなかった。手紙を書いて送ったけれども、返事もしない。侘び歌などを書いて送ったけれども、返事もしない。甲斐がないと思いながらも、十一月十二月の雪の降り凍る〔寒さの〕時も、六月の照りつける〔暑さの〕日にも妨げられずに通って来た。この人々は、ある時は竹取〔の翁〕を呼び出して、娘を私にくださいと、ひれ伏して拝み、手をすり合わせて〔お願いし〕なさるけれど、月日を過ごした。

こうなると、この人々は、めいめいの家に帰って、物思いをし、祈祷をして願を立て、思いを止めようとするけれども、止めることができない。それでも、最後には男に合わせないことがあろうか〔いや、合わせるだろう〕、と思って、〔翁に〕望みをかけていた。無理に〔姫の〕お気持ちを見ようと通い歩く。

〔姫が〕大きくなったのを見つけて、翁はかぐや姫に言うことには、私の子は仏であり、変化の人であると、人が申すとおり、これほど大きくなるまで養い申し上げた志は、決しておろそかではあるまい。翁の申そうとすることを、聞いてくださるだろうか、と言うと、かぐや姫が言うには、翁のおっしゃることを、どうして承らないことがありましょう〔か、承ります〕。変化の者は、これまで〔人の世に〕あった身だとも知らずに、〔翁を〕親とこそ思い申し上げますが、と言うと、翁は、嬉しくもおっしゃるものだなあ、と言う。

翁は、年が七十を過ぎた。今日とも明日とも〔命は〕知れない。この世の人は、男女が逢うことをする。女は男に逢うことをする。その後に、門〔戸〕も広くなるものです。どうして、そういうことなしでいられましょうか。

こうかぐや姫が言うには、どうして〔結婚を〕拒むことがありましょうか、いたしましょう。変化の人だとしても、女の身をお持ちでしょう、と〔翁が〕言うと、翁がおいでの間は、そのように〔今のままで〕いましょう。

この人々が年月を経て、このようなお気持ち〔結婚の勧め〕を、おっしゃることを思い定めて、一人一人にお会い申し上げなさい、と〔翁が〕言うと、かぐや姫は言う、よくもない〔私の〕姿を、深い心も知らないで、どうして〔結婚など〕思いつきましょう、後悔するようなこともあるに違いない、と思うばかりです。世の賢い人であっても、深い志を知らなければお会いしにくい、と〔私は〕思う、と言う。

翁が言うには、思いのとおりにおっしゃるのだな。そのように、どのような志のある人々に、お会いになろうとお思いか。これほど志の並々でない人々にこそ、お会いなさるべきだ。かぐや姫が言うには、どれほどの深さを〔試そうと〕見ようと言うのですか。ほんの少しのことです。人の志は〔皆〕等しいようなものです。どうしてかえって優劣が分かるでしょう〔分かりません〕。五人の中で、珍しい宝物をお見せくださる方に、ご志が勝っているとして、お仕えしようと、その〔五人の〕人々に申し上げてください、と言う。〔翁は〕よいことだと承知した。

日が暮れる頃に、いつもの〔五人の〕人々が集まった。人々は、ある者は笛を吹き、ある者は歌を歌い、ある者は唱歌をし、ある者は口笛を吹き、扇をあからしなごするのを、翁が出てきて言うには、ありがたくも、むさくるしい所に、年月を経ておいでくださること、極まりないかしこまりを申し上げます。翁の命は、今日明日とも知れない〔ほど短い〕のに、あのようにおっしゃる君達にも、よく思い定めてお仕えしなさいと〔姫に〕申すと、〔五人は〕もっともなことだ。どなたも優劣がおありでないので、お仕えしよう、それを決めるべきだ、と言う。およそ珍しい物をお見せくださることで、ご志のほどは分かるでしょう。これはよいこととなった。人の恨みもないだろうと〔翁が〕言うと、翁は〔内へ〕入って言う。かぐや姫もよいことだと言うと、翁は〔重ねて〕入って言う。

かぐや姫〔が言うには〕、石作皇子には、天竺に仏の御石の鉢という物がある。それを取ってきてください、と言う。車持皇子には、東の海に蓬莱という山がある。そこに白銀を根とし、黄金を茎とし、白玉を実として立っている木がある。その一枝を折ってきてください、と言う。もう一人には、唐土にある火鼠の裘を持ってきてください。大伴大納言には、龍の首に五色に光る玉がある。それを取ってきてください。石上中納言には、燕の持っている子安貝を一つ取ってきてください、と言う。翁は、難しい事どもであるようだ。この国にある物でもなくて。こんな難しいことを、どう申し上げよう、と言う。かぐや姫が、何が難しいものですか、と言うと、翁は、ともあれこうあれ申し上げよう、といって、出て行って〔伝えると〕、このように上達部が聞いて、穏やかに、辺りから、どよめくような歩行を、どうして〔姫は〕おっしゃらないのか、と言って、うむ、といって皆帰ってしまった。

任意の復習へ

底本:『竹取物語 校訂標註』飯田永夫校、上原書店、明治25年[1892](国立国会図書館蔵 特46-615)。本文画像:所蔵機関の公開資料。

明治25年[1892]上原書店刊『竹取物語 校訂標註』(飯田永夫校、国立国会図書館蔵 特46-615)の本文を原画像と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。