御伽草子「浦島太郎」 / 第5場面
帰郷と翁の知らせ
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あらすじ・人物・読み方
帰り着いた故郷は人跡絶え、紫の庵の翁に尋ねると、浦島は七百年以前の人だという。翁は古塚と石堂こそその廟所だと指さして教える。
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さて浦島は、ふるさとへ帰って見ると、人跡は絶え果てて、虎の伏す野辺と古びていた。浦島はこれを見て、これはいったいどうしたことだろうと思った。そばを見ると、紫の庵があったので、立ち寄ってものを言おうと言ったところ、
中から八十歳ばかりの翁が出てきて、どなたでいらっしゃいますかと申したので、浦島が申したことには、ここに浦島の行方はありませんかと言ったところ、翁が言うことには、どのような人でいらっしゃれば、浦島の行方をお尋ねなのですか。不思議なことでございます。その浦島というのは、はや七百年も以前の事と言い伝えられております、と申したので、
太郎は大いに驚き、これはいったいどうしたことだと言って、その由をありのままに語ったところ、翁も不思議の思いをなして、涙を流し申したことには、あそこに見えております、古い塚、古い石堂こそ、その人の廟所と言い伝えられて、きふらへといって、指をさして教えたので、
太郎はこうして、草深く露の多い野辺を分けて、古い塚に参り、涙を流して、こう詠んだ。かりそめに出てきたのだった。帰って来て見れば、とちふずの辺にいるのも悲しい。
底本:『御伽草子 後』今泉定介・畠山健校定、吉川半七、明治24年[1891](国立国会図書館蔵 913.49-O-I)所収「浦島太郎」。本文画像:所蔵機関の公開資料。
明治24年(1891)今泉定介・畠山健校定『御伽草子 後』(吉川半七、国立国会図書館蔵 913.49-O-I)所収「浦島太郎」の本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像と照合した独自編集本文です。底本は渋川版の本文を明瞭な字形で伝える明治の校定本で、通行字体・現行仮名へ写し、句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。