第48帖 早蕨 / 第2場面
中の君、阿闍梨への返歌
あらすじ・人物・読み方
中の君は「峰の早蕨」の返歌を阿闍梨に送る。面痩せした中の君は亡き大君にますます似て見える。匂宮は中の君を京の二条院へ迎える決意を固める。
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現代語で読む
この春は、誰にお見せすればよいのでしょう。亡き人の形見として摘んだ峰の早蕨を。使者に禄をお与えになる。
まことに盛りで匂い多くいらっしゃる方が、いろいろなお悲しみに少し面痩せしていらっしゃるのが、とても上品で優美な感じがまさって、亡き人にも似ていらっしゃった。お並びでいらっしゃった時は、それぞれ素晴らしく、全く似ていらっしゃるとも見えなかったのに、ふと忘れては、あの方かと思われるほど似ていらっしゃるのを、「中納言殿が、亡骸だけでも残して拝見できるものであったらと、朝夕にお慕い申し上げていらっしゃるようだけれど、同じことなら、お結ばれになるご運命ではなかったのだことよ」と、拝見する女房たちは残念がる。
あの御方のお側の人が通って来る便りに、お互いのご様子は絶えず聞き合っていらっしゃった。いつまでもぼんやりと思いに沈んでいらして、「新しい年とも言わず、悲しそうな涙顔に、なっていらっしゃる」とお聞きになっても、「なるほど、一時の浮ついたお心ではいらっしゃらなかったのだ」と、今になってますます愛情の深さが思い知られる。
宮は、お越しになることがまことに窮屈で機会もないので、「京へお移し申し上げよう」と決意なさっていた。
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第48冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。