ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

竹取物語 / 第4場面

蓬莱の玉のえた

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蓬莱の玉のえたをもとにした創作画
あらすじ・人物・読み方

車持皇子は内匠六人を籠めて玉の枝を作らせ、蓬莱から持ち帰ったと偽る。だが工匠たちの賃金を求める文で偽りが露見し、枝は返される。

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竹取物語・第4場面0 / 174
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車持皇子は、心にたばかりのある人で、表向きは、筑紫国に湯浴みに参ろうとして、暇を申し出て、かぐや姫の家に、玉の枝を取りに参ります、と言わせて、〔難波へ〕お下りになる。お仕えする人々は、皆難波までお送りした。皇子は、たいそう忍んでおっしゃって、人も大勢は連れておいでにならず、近くお仕えする者だけを連れてお出になった。お送りの人々は、お見送りして帰った。

これは〔蓬莱行きは〕果たせないだろうと人に見せかけて、三日ほどして、〔船を〕漕いでお帰りになった。あらかじめ事を皆定めて、その時、第一の工匠である内匠ら六人を召し取って、簡単に人が近寄って来られない家を作って、構えを三重にして籠もって、工匠たちを入れて、皇子も同じ所に籠もって、作らせなさった限りの、十六を、構えに竈〔の口〕を開けて、玉の枝をお作りになる。かぐや姫のおっしゃるように、違わずに作り出した。たいそう念入りに細工して、難波に船で持ち出した。船に乗って帰ってきた、と、殿〔翁〕に告げ知らせて、たいそうひどく苦しそうな様子をして座っておられた。迎えに人が大勢参った。玉の枝を長櫃に入れて、物を覆って持って参る。いつの間にか聞きつけて、車持皇子は優曇華の花を持って上京なさった、と騒ぎ立てた。

これをかぐや姫が聞いて、私はあの皇子に負けてしまうに違いない、と、胸がつぶれる〔思いで〕思った。こうしているうちに、門を叩いて、車持皇子がおいでになった、と告げる。

旅のお姿のままおいでだ、と言うと、〔翁は〕お目にかかる。皇子がおっしゃるには、命を捨てて、あの玉の枝を持って来た、といって、かぐや姫にお見せ申し上げてください、と言うと、翁は〔枝を〕持って入った。この玉の枝に手紙を付けていた。命を無駄に捨てることになっても、玉の枝を手折らずに帰ることは、決してなかったでしょう。これをもしみじみと見ていると、竹取の翁が、走って入ってきて言うには、この皇子に申し上げた蓬莱の玉の枝を、一か所も怪しい所がなく、間違いなく持っておいでになりました。何をもって、あれこれ申すことがありましょう〔申しません〕。旅のお姿のままで、私の家へもお寄りにならず、といって、言い続けていた。早くこの皇子にお会いしてお仕えなさい、と言うのに、物も言わず、頬杖をついて、〔頬杖〕をついて、ますます物思いに沈んでいた。

この皇子は、今さら何かと言うべきではない。と言うままに、〔旅の〕様子をこしらえてお上りになった。翁は、もっともだと思う。この国には見られない玉の枝である。この度は、どうして〔文句を〕言い申せようか〔言えない〕。人柄もよい方でおいでだ、などと言っていた。かぐや姫が言うには、親のおっしゃることを、一途にお断り申し上げようというのではなく、〔親が〕気の毒に思われて、得がたい物を珍しいと申したのですが、このように見事に持って来たものを、どうして悪く思ったりしましょう、と言うけれども、それでも、翁は、〔姫の〕聞こえの内を辛く思うなどする。

翁が、皇子に申すことには。どのような所に、この木はございましたか、不思議なほど麗しい物だと申します。皇子が答えておっしゃるには。以前、一昨年の二月十日に、難波から船に乗って、海中に出て、行く方も分からず、覚束ないことだ、と思うことがなければ、世の中に生きて、何になろうと思ったので、ただ空しい風に任せて歩く〔漂う〕。命が死ぬならどうしよう〔死んでもよい〕。生きている限り、こうして歩いて、蓬莱と言うだろう山に逢えるかと、波に漂い歩き回ったところ、我が国の内を離れて歩き回ったところ、ある時は波が荒れ続けて、海の底にも入りそうになり、ある時は風が吹きつけて、知らない国に吹き寄せられて、鬼のような物が出て来て、殺そうとした。ある時には、来た方も行く末も分からず、海に紛れそうになった。ある時には、得体の知れない方から、気味の悪い物が来て、食いかかろうとした。ある時には、旅先で助けてくれる人もない所で、色々の病気をして、行く方すらも分からなかった。船の行くに任せて、海に漂って、五百日という頃の、辰の時〔朝〕ほどに、海の中に遠く山が見えた。舟の中を、〔やっとのことで〕じっと見る。海の上に浮かんでいる山は、たいそう大きかった。その山の様子は、高く麗しい。これが私の覚えている〔蓬莱の〕山だろうと思うけれども、さすがに恐ろしく思われて、山の周りを指して回らせて、二三日ほど見て歩くと、天人の装いをした女が、山の中から出て来て、銀の金の椀を持って、水を汲み歩いている。これを見て、船から下りて、この山の名を何と申しますか、と尋ねると、女が答えて言うには、これは蓬莱の山です、と答える。これを聞くと、嬉しさは限りがない。この女に、そのようにおっしゃるのはどなたですか、と尋ねる。私の名は、はうかむるり、と言って、ふと山の中に入ってしまった。その山を見ると、さらに登るすべがない。その山の側面を回ると、世の中にない花の木々が咲いている。金銀瑠璃色の水が流れ出ていた。そこに色々の玉の橋が渡してある。その辺りに照り輝く木々が立っている。その中の一つを取って持って参って来たのは、たいそう悪かったけれど、〔姫が〕おっしゃったことに違うまいと思って、この花〔の枝〕を折って参って来たのです。山は限りなく思われました。〔その有様は〕世に譬えるべきではありませんでしたが、この枝を折って、とかば、さらに心もとなくて、船に乗って、追い風が吹いて、四百日余りかかって参って来たのです。大願の力でしょうか、難波から昨日、都に参って来ました。さらには潮に濡れた衣さえも着替えずに、そのままこちらへ参って来たのです、とおっしゃると、

翁が聞いて、歎いて詠んだ〔歌〕、呉竹の、世々の竹取が野山で〔竹を取るように〕、ああ恋しい、節を見た世も〔あったことだ〕。

これを皇子が聞いて、日頃、思い詫びてきた心は、今日こそ落ち着いた、とおっしゃって、返し〔の歌〕、私の袂が今日乾いたならば、恋しさの千種の思いも、忘れられてしまうことでしょう。とおっしゃる。

こうしているうちに、男たちが六人連なって、庭に出て来た。一人の男が、文挟に手紙を挟んで申し上げる。作物所の司の工匠、漢部内麿が申すことには。玉の木を作ってお仕えしたことと、心を砕いて、千日余りに力を尽くしたことは、並々ではない。それなのに、祿をまだいただいていない。これをいただいて、分け合って、今日は〔祿を〕いただきましょう、と言って、〔文挟を〕捧げた。竹取の翁は、この工匠たちが申すことを、何事かと、かしこまって聞いていた。皇子は、我を忘れたような様子で、肝が消えてしまいそうな心地で座っておられた。これを、かぐや姫が聞いて、この差し上げた手紙を取れ、と言って見ると、手紙に申し上げていることには。皇子様は、千日余り、賤しい工匠たちとご一緒に、同じ所に隠れておいでになって、立派な玉の枝を作らせなさって、官〔位〕もいただこうとおっしゃいました。これを、この頃考えますに、御面の皮ひとつで、これは、かぐや姫のお求めとして給うべきものでした、と承って、このお屋敷からいただこうと申して、いただくべきです。と言うのを聞いて、かぐや姫は、日が暮れるままに思いわびていた心地が、笑みが栄える〔ほど嬉しくなって〕、翁を呼び寄せて言うことには、本当に蓬莱の木かと思ってしまいました。ああ、見事な嘘であったことだ、と、早く〔皇子を〕お帰しなさい、と言うと、翁が答える。はっきりと作らせた物だと聞いたからには、お帰ししよう、と言うと、〔皇子は〕頷いている。かぐや姫の心は満ち足りた。〔車持の〕以前の歌への返し〔の歌〕、本当かと思って聞いて見てみれば、言葉を飾っただけの玉の枝であったことだ。と言って、玉の枝も返した。竹取の翁は、それほど語らっていたが、さすがに目覚めて、眠りを取った。皇子は、立ち去るのもみっともなく、座っておられた。日が暮れたので、〔皇子は〕すべり出て〔帰って〕しまった。

あの訴え出た工匠たちを、かぐや姫が、呼び出して、嬉しい人々だと言って、祿をたくさん取らせなさる。工匠たちは、たいそう喜んで、思っていたとおりでもあるなあ、と言って、帰る道で、車持皇子に、血が流れるほど打たせなさる〔ほど打たれる〕。祿を得た甲斐もなく、皆、取り捨てさせなさったので、〔工匠たちは〕逃げ失せてしまった。こうして、あの皇子は、一生の恥を取った。過ぎて行く〔だけ〕ではなく、女を得られないだけでもなく、天下の人々が見て思うだろう、その恥ずかしさを〔恐れて〕おっしゃって、ただ一か所の深い山へ入ってしまった。お供してお仕えする人々は、皆手分けして探し申し上げたけれども、ついに〔そのお姿は〕見えなくなり、お目にかかることはできなかった。皇子がお供に隠してお仕えしようとして、年頃〔皇子を〕見かけなかったのである。これを、たまさかる、と言い始めた。

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底本:『竹取物語 校訂標註』飯田永夫校、上原書店、明治25年[1892](国立国会図書館蔵 特46-615)。本文画像:所蔵機関の公開資料。

明治25年[1892]上原書店刊『竹取物語 校訂標註』(飯田永夫校、国立国会図書館蔵 特46-615)の本文を原画像と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補っています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。