をみなへし
盛りの色を
見るからに露のわきける
身こそ知らるれ
女郎花の盛りの色を見るにつけても、〔朝露に濡れる花とそうでないものとを〕分けた露のように、〔花にも劣る〕わが身のほどが思い知られます。
発音の読み:おみなえし / さかりのいろを / みるからに / つゆのわけける / みこそしらるれ
をみなへし
盛りの色を
見るからに露のわきける
身こそ知らるれ
女郎花の盛りの色を見るにつけても、〔朝露に濡れる花とそうでないものとを〕分けた露のように、〔花にも劣る〕わが身のほどが思い知られます。
発音の読み:おみなえし / さかりのいろを / みるからに / つゆのわけける / みこそしらるれ
白露は
わきてもおかじ
をみなへし心からにや
色の染むらむ
白露は〔花を〕分け隔てて置くことはあるまい。女郎花よ、お前の心から〔その魅力で〕色が染まるのだろうか。
発音の読み:しらつゆは / わけてもおかじ / おみなえし / こころからにや / いろのそむらむ
きの國の
しらゝの濱に
ひろふてふこの石こそは
いはほともなれ
紀の国の白らの浜で拾うというこの石こそは、岩のように〔立派なもの〕であれ。
発音の読み:きのくにの / しららのはまに / ひろうてふ / このいしこそは / いわほともなれ
菊のつゆ
わくらばかに
袖ぬれて花のあるじに
千代はゆづらむ
菊の露にほんの僅か袖が濡れて、花の持ち主〔道長〕に千代〔の長寿〕は譲りましょう。
発音の読み:きくのつゆ / わくらばかに / そでぬれて / はなのあるじに / ちよはゆずらむ
めづらしき
ひかりさし添ふ
杯はもちながらこそ
千代もめぐらめ
珍しい光が差し添う杯は、〔この〕持ちながらこそ千代をも巡るであろう。
発音の読み:めずらしき / ひかりさしそふ / さかづきは / もちながらこそ / ちよもめぐらめ
水鳥を
みづのうへとや
よそに見む我もうきたる
世をすぐしつゝ
水鳥を水の上とよそに見ようか、私も浮いた世を過ごしながら。
発音の読み:みずどりを / みずのうえとや / よそにみむ / われもうきたる / よおすぐしつつ
雲間なく
ながむる空も
かきくらしいかに忍ぶる
時雨なるらむ
雲の切れ間もなく眺める空もすっかり暗くなって、どのように堪えている時雨なのだろうか。
発音の読み:くもまなく / ながむるそらも / かきくらし / いかにしのぶる / しぐれなるらむ
ことわりの
時雨の空は
雲間あれどながむる袖ぞ
かわく間もなき
時雨の空には、もっともなことに雲の切れ間もあるけれど、眺める〔私の〕袖は乾く間もない。
発音の読み:ことわりの / しぐれのそらは / くもまあれど / ながむるそでぞ / かわくまもなき
いかにいかゞ
數へやるべき
八千年のあまり久しき
君がみよをば
どのようにどう数えやることができようか、八千年あまりも長い君の御代を。
発音の読み:いかにいかが / かぞえやるべき / はっせんねんの / あまりひさしき / きみがみよをば
あしたづの
餘しあれば
君が代の千年の數も
かぞへとりてむ
朝鶴の余りがあるので、君の御代の千年の数も数え取ってしまおう。
発音の読み:あしたづの / あまりしあれば / きみがよの / ちとせのかずも / かぞえとりてむ
うき寝せし
水の上のみ
こひしくて鴨のうは毛に
冴えぞ劣らぬ
つらい浮き寝をした水の上の身が恋しくて、鴨の上毛に〔寒さが〕冴えるのに劣らない。
発音の読み:うきねせし / みずのうえのみ / こいしくて / かものうわげに / さえぞおとらぬ
うちはらふ
友なきころの
寝ざめにはつがひし鴛ぞ
夜半に戀しき
払いのける友もない頃の寝覚めには、つがいの鴛こそ夜中に恋しい。
発音の読み:うちはらう / ともなきころの / ねざめには / つがいしおしぞ / よわにこいしき
おほかりし
豊の宮人
さしわきてしろき日陰を
あはれとぞ見し
大勢いた豊の宮人たちが、さし分けて〔立つ〕白い日陰を、しみじみと見たことだ。
発音の読み:おおかりし / とよのみやびと / さしわきて / しろきひかげを / あわれとぞみし
年くれて
わが世ふけゆく
風の音に心の中の
すさまじきかな
年が暮れて、私の人生も更けゆく。風の音に、心の中のすさまじさよ。
発音の読み:としくれて / わがよふけゆく / かぜのおとに / こころのなかの / すさまじきかな
すきものと
名にしたてれば
見る人の折らで過ぐるは
あらじとぞ思ふ
好き者と名を立てれば、見る人が〔梅の枝を〕折らずに過ぎることはあるまいと思う。
発音の読み:すきものと / なにしたてれば / みるひとの / おらですぐるは / あらじとぞおもう
人にまだ
折られぬものを
誰か此のすきものぞとは
くちならしけむ
人にまだ折られていないものを、誰がこの好き者だと言って口馴らしたのだろう。
発音の読み:ひとにまだ / おられぬものを / たれかこの / すきものぞとは / くちならしけむ
たゞならじ
と許りたゝく
水鶏ゆゑあけてはいかに
悔しからまし
ただ事ではないとばかりに叩く水鶏ゆえ、〔戸を〕開けてしまったらどんなに悔しいだろう。
発音の読み:ただならじ / とばかりたたく / すいけいゆえ / あけてはいかに / くやしからまし