源氏物語 第37帖
横笛 よこぶえ
あらすじ
柏木の死から月日がたち、源氏はその四十九日の法要を営み、朱雀院から女三の宮へ出家を勧める文が届く。若君(後の薫)の愛らしさに源氏は心を慰めるが、その出生の秘密は胸の内に秘めたままだ。一方、夕霧は一条の宮の落葉の宮を訪ね、琴の音を介して思いを伝え、亡き柏木愛用の横笛を贈られる。その夜、夕霧の夢に柏木の亡霊が現れて笛への執心を歌に残し、夕霧は六条院で源氏から笛が陽成院の御笛である由来を聞く。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面柏木の死を悼む柏木がはかなく亡くなった悲しみは尽きず、多くの人が恋い慕っている。六条院でも源氏が故人をしのび、後事を手厚く営むうち、内大臣はその心遣いに感謝する。朱雀院は女二の宮や入道の宮の身を案じながらも、ひそかに思い続けている。第2場面朱雀院の文と女三の宮の返歌朱雀院が女三の宮へ、筍や野老に添えて、出家への思いを詠んだ歌の文を送る。居合わせた源氏は、宮が書き直した返歌の紙を見て、宮が世にあらぬ所を求める様子を心配して申し上げる。第3場面若君と呉竹の歌源氏が女三の宮のもとで若君と過ごし、その際立った美しさを亡き柏木に重ねて見つめる。若君が筍を握る姿に、源氏は憂き節と子を掛けた歌を口ずさむ。若君の成長に、源氏は宿縁を思い直しながらも、過ぎた罪を許し難く思う。第4場面一条の宮の琴夕霧は柏木の臨終の一言の真意を知りたく、秋の夕べに一条の宮を訪れる。御息所との対面の後、柏木の形見の和琴を弾くが、落葉の宮は琴を弾くことを固く辞退する。宮が箏をほのかに鳴らすのを聞き、夕霧は琵琶で「想夫恋」を弾く。第5場面想夫恋と横笛の贈答夕霧は落葉の宮に箏を請い、言葉に出さぬ思いを歌に詠みかけるが、宮は末の方を少し弾いて返歌するだけである。帰り際、夕霧は柏木遺愛の横笛を贈り、試しに吹いて、宮と虫の声と横笛をめぐる歌を贈答する。夜は更けていく。
場面 第6–8場面
第6場面帰邸と雲居雁のすね一条の宮から帰った夕霧は、皆が寝静まった邸で、寝たふりをする雲居雁に催馬楽を歌いかけ、格子を開けて横になる。笛を吹きながら落葉の宮や御息所、亡き柏木のことを思い巡らし、強く出る雲居雁の態度も、睦まじく過ごした年月を思えばもっともだと納得する。第7場面夢の柏木夕霧の夢に柏木の亡霊が現れ、横笛に寄せた歌を詠んで消えようとする。若君の泣き声で目覚めた夕霧は、雲居雁と若君を慰めながら笛の行く末に悩み、誦経をさせた末に、笛を持って六条院へ参る。第8場面六条院、笛の由来夕霧は六条院で女御のもとにいる三の宮と遊び、若君の美しさと柏木に似た面影に心を動かされる。源氏との対話で一条の宮での想夫恋のことが話題になり、夕霧は夢に現れた柏木のことをほのめかす。源氏は笛が陽成院の笛で、式部卿宮から柏木へ贈られた由来を明かすが、若君の出生の秘密には触れず言葉を濁す。
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第37冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。