ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

源氏物語 第36帖

柏木 かしわぎ

あらすじ

女三の宮への過ちに苛まれ、柏木は年が改まっても病が癒えず、煙の歌を宮に送っては返歌にすがる。宮は源氏の子を産むが、その子は実は柏木の子であった。朱雀院は夜に訪れて宮の剃髪を遂げさせ、源氏は複雑な思いを抱えたまま若君の五十日を祝う。柏木は夕霧にだけ後事を託して若くして亡くなり、残された人々は弔いの歌を交わしながらその死を惜しむ。

この帖の人物

場面 第1–5場面

第1場面年の改まりと宮への文年が改まっても柏木の病は癒えず、彼は来世への思いと果たせなかった望みの間で苦悩する。侍従のいる隙に、柏木は女三の宮へ最期の文と歌を送る。宮は恐ろしさにためらいながらも、硯を用意されてしぶしぶ返事を書く。第2場面加持の席を抜けて大臣は葛城山の行者を招いて加持や修法を騒々しく行わせるが、柏木は陀羅尼の声を恐れて席を抜け出し、小侍従と語り合う。柏木は女の霊や秘めた過ちへの苦悩を打ち明け、宮の返歌に涙しながら、煙となっても思いは離れないと返事を書く。第3場面若君の誕生女三の宮が懐妊の苦しみに悩み、一夜明けて男君(薫)を出産する。源氏は、柏木に似た顔で生まれてくるのではないかと案じつつ、人目には喜びを装い、盛大な産養が催される。宮は自らの身を憂い、出家を願い続ける。第4場面宮の苦衷と源氏の隔意源氏は宮のもとに夜は泊まらず、昼に様子をうかがうだけになる。宮は生きてはいられない心地を訴え、尼になりたいと繰り返す。源氏は内心では出家させるのもよいかと思い寄せながらも、惜しさに慰めて翻意を促す。第5場面朱雀院の夜の訪問衰弱した女三の宮が朱雀院を恋しく思い、尼になりたいと願う様子が伝えられると、院は世の非難を顧みず夜に紛れて六条院を訪れる。源氏の説明を聞いた院は宮と対面し、宮の出家の願いを源氏とともに案じつつも、最期の望みなら助けになる形で叶えるべきだと語る。

場面 第6–10場面

第6場面剃髪と受戒朱雀院は源氏への積年の案じを表に出さず、宮の後見を源氏に委ねた証として宮を源氏のもとに置くことを決め、せめて受戒だけでもと勧める。源氏は剃髪を思いとどまらせようとするが宮の決意は固く、夜明け方に尊い僧たちを呼んで宮の髪を下ろし、受戒させる。第7場面もののけの退去朱雀院の訪問を受けた女三の宮は弱りきって応えることもできず、源氏は宮に代わって院へ御礼を述べる。院は宮の行く末を源氏に託し、源氏は恐縮して答える。後夜の加持に物の怪が現れて去ると告げ、宮は少し息を吹き返すが、なお頼りない様子であった。第8場面柏木の最期の頼み女三の宮のことを聞いた柏木はますます衰え、宮に今一度会いたいと願うが母に許されない。柏木は母や右大弁の君に宮への取りなしを頼み、弟たちをはじめ邸の人々がその心細い言葉を悲しむ。朝廷は柏木を権大納言に進めるが、柏木は苦しい中でかしこまって応え、父大臣も悲しみに惑う。第9場面夕霧への告白若君誕生の祝いに参じた夕霧は、病床の柏木に招き入れられ、久しく親しく交わってきた友の衰弱した姿に涙する。柏木は、六条院の源氏に許されぬ思いを抱いて病みついた経緯を打ち明け、死後にも源氏の勘気が解けるよう取りなしてほしいと夕霧に託す。第10場面柏木の死夕霧は柏木の打ち明けに思い当たる節がありながら、源氏が深く嘆いていると伝えて慰める。柏木は秘密を漏らさぬよう念を押し、一条の女二の宮への見舞いを託して夕霧を帰す。その後柏木は女二の宮にも会えぬまま亡くなり、父母をはじめ人々は深く嘆き、尼宮も若君の宿命を思って涙する。

場面 第11–15場面

第11場面五十日の祝い弥生、薫が五十日を迎え、源氏は剃髪した女三の宮を怨みながらも日ごと訪れる。五十日の祝いに朱雀院も訪れ、源氏は若君を抱いて柏木にそっくりな面差しに涙するが、事情を表には出さない。第12場面岩根の松の歌と夕霧の回想人々が退いた隙に源氏は女三の宮へ薫の出生をほのめかす「岩根の松」の歌を詠みかけるが、宮は答えない。夕霧は柏木がほのめかした告白を回想し、その弱さと軽々しさを思い悩みながらも誰にも打ち明けられない。第13場面一条の宮への弔問と歌柏木の四十九日の法事が進む中、夕霧は一条の宮に残された御息所を弔問し、亡き柏木への尽きせぬ思いを語り合って涙する。帰り際、庭の桜に口ずさんだ夕霧の歌に、柏木の妹の更衣が「柳の芽」の歌で応える。第14場面致仕の大臣と霞の衣の歌々夕霧は一条の宮からそのまま致仕の大臣のもとへ参り、柏木を失った親子の悲しみを分かち合って涙に暮れる。大臣は更衣の「柳の芽」の歌に心を乱し、夕暮れの霞を前に、大臣・夕霧・弁の君が「霞の衣」の歌を詠み交わす。第15場面女二の宮への訪問夕霧は柏木の未亡人である女二の宮の一条の宮を訪ね、柏木と楓の枝に寄せて歌を詠みかける。宮付きの少将の君が返歌でやんわりと受け流すと、夕霧はもっともだと少し微笑む。

場面 第16–16場面

出典・底本

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第36冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。