ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

物語の中の和歌

無名草子

語り手の老尼 から 語り手の老尼 へ

おち歸り
かたらふならば
ほとゝぎす
死出の山ぢの
しるべとゞもなれ

落ち帰って語らうならば、ほととぎすよ、死出の山路の道案内ともなってくれよ。

発音の読み:おちかえり / かたらうならば / ほととぎす / しでのやまじの / しるべとどもなれ

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女三の宮 から 柏木 へ

鐘の音の
絶るひゞきに
ねをそへて
我世盡ぬと
君に傳へよ

鐘の音の絶える響きに声を添えて、私の世は尽きたと君に伝えておくれ。

発音の読み:かねのおとの / たえるひびきに / ねおそえて / わがよつきぬと / きみにつたえよ

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兵部卿宮(匂宮) から 兵部卿宮(匂宮) へ

もろともに
大内山は
いでつれど
行方見せぬ
いざよひの月

一緒に大内山は出てきたけれど、行方を見せない十六夜の月よ。

発音の読み:もろともに / おおうちやまは / いでつれど / ゆくえみせぬ / いざよいのつき

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光源氏 から 光源氏 へ

見し人の
けぶりを雲と
詠れば
夕の空も
むつまじき哉

見た人の煙を雲と詠めば、夕べの空も睦まじいことよ。

発音の読み:みしひとの / けぶりおくもと / よめれば / ゆうのそらも / むつまじきかな

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光源氏 から 光源氏 へ

限あれば
薄ずみ衣
淺けれど
淚ぞ袖を
ふちとなしける

限りがあるので薄墨衣は浅いけれど、涙が袖を淵と成しける。

発音の読み:かぎりあれば / うすずみごろも / あさけれど / なみだぞそでお / ふちとなしける

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明石の君 から 明石の君 へ

鳥べ山
もえし煙に
まがふやと
螢のしほ燒
うらみにぞゆく

鳥部山の燃える煙に紛れるかと、蛍の塩焼きを恨みにぞ行く。

発音の読み:とりべやま / もえしけぶりに / まがうやと / ほたるのしおやき / うらみにぞゆく

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光源氏 から 紫の上 へ

身はかくて
さすらへぬとも
君かあたり
さらぬ鏡の
かげははなれし

身はこうして流離っても、君のあたりを去らない鏡の影は離れてしまった。

発音の読み:みはかくて / さすらえぬとも / きみかあたり / さらぬかがみの / かげははなれし

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紫の上 から 光源氏 へ

別るども
影だにとまる
物ならば
鏡を見ても
なぐさみなまし

別れても影だけでも留まる物ならば、鏡を見ても慰みましょうに。

発音の読み:わかるども / かげだにとまる / ものならば / かがみおみても / なぐさみなまし

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光源氏 から 光源氏 へ

うき世をば
今ぞ別るゝ。
どいまらむ
名をばたゞすの
神にまかせて

浮き世をば今ぞ別れる。と言い残す名をば糺の神に任せて。

発音の読み:うきよおば / いまぞわかるる。 / といまらむ / なおばただすの / かみにまかせて

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紫の上 から 紫の上 へ

惜からぬ
命にかへて
めのまへの
別をしはし
どゞめてしかな

惜しくない命に代えて、目の前の別れをしばし留めてほしい。

発音の読み:おしからぬ / いのちにかえて / めのまえの / わかれおしばし / とどめてしかな

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紫の上 から 紫の上 へ

月影の
やどれる袖は
せばくとも
留めても見ばや
あかぬひかりを

月影の宿れる袖は狭くとも、留めても見たい、飽かぬ光を。

発音の読み:つきかげの / やどれるそでは / せばくとも / とどめてもみばや / あかぬひかりお

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光源氏 から 光源氏 へ

戀佗で
なくねにまがふ
浦淚は
おもふかたより
風や吹らむ

恋い侘びて泣く音に紛う浦の涙は、思う方より風が吹くらむ。

発音の読み:こいわびて / なくねにまがう / うらなみだは / おもうかたより / かぜやふくらむ

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光源氏 から 光源氏 へ

いつとなく
大宮人の
戀しきに
櫻かざし
けふはきにけり

いつとなく大宮人の恋しいことに、桜を挿頭して今日は来たことだ。

発音の読み:いつとなく / おおみやびとの / こいしきに / さくらかざし / きょうはきにけり

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藤壺の宮 から 光源氏 へ

うらなくも
たのみける哉
契しを
松より淚は
こえし物ぞと

恨みなくも頼みけるかな、契ったことを、松より涙は越えた物ぞと。

発音の読み:うらなくも / たのみけるかな / ちぎりしお / まつよりなみだは / こえしものぞと

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柏木 から 女三の宮 へ

いまはとて
てもえむ煙も
むすぼゝれ
絕ぬおもひの
なをや殘らむ

今はとて、手も得ぬ煙も結ぼおれ、絶えない思いの名をや残らむ。

発音の読み:いまはとて / てもえむけぶりも / むすぼおれ / たえぬおもいの / なおやのこらむ

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女三の宮 から 柏木 へ

立そひて
消やしなまし
うき事を
おもひみだるゝ
烟くらべに

立ち添いて消えてしまいそうな憂き事を、思い乱れる煙比べに。

発音の読み:たちそいて / きえやしなまし / うきことお / おもいみだるる / けぶりくらべに

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光源氏 から 光源氏 へ

木の下の
車にぬれて
さかさまに
霞の衣
きたる春かな

木の下の車に濡れて、逆さまに霞の衣を着た春であることよ。

発音の読み:このしたの / くるまにぬれて / さかさまに / かすみのころも / きたるはるかな

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夕霧 から 夕霧 へ

古の
秋のゆふべの
戀しきに
いまいと見えし
明くれの夢

古の秋の夕べの恋しいことに、今ひと見えた明け暮れの夢よ。

発音の読み:いにしえの / あきのゆうべの / こいしきに / いまいとみえし / あけくれのゆめ

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光源氏 から 光源氏 へ

うき世には
雪消なむと
おもへども
おもひの外に
われぞほどふる

浮き世には雪が消えるだろうと思うけれど、思いの外に私だけが程を経る。

発音の読み:うきよには / ゆききえなむと / おもえども / おもいのほかに / われぞほどふる

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光源氏 から 光源氏 へ

かきつめて
見るもかなしき
もしほ草
おなじ雲ゐの
烟ともなれ

掻き集めて見るも悲しい藻塩草よ、同じ雲居の煙ともなれ。

発音の読み:かきつめて / みるもかなしき / もしおぐさ / おなじくもいの / けぶりともなれ

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薫 から 薫 へ

紅に
落るなみだの
かひなきは
かたみの色を
染ぬなりけり

紅に落ちる涙の甲斐なきは、形見の色を染めなかったからだ。

発音の読み:くれないに / おつるなみだの / かいなきは / かたみのいろお / そめぬなりけり

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光源氏 から 光源氏 へ

絶はてぬ
清水になどか
なき人の
偈をだに
とゞめざりけむ

絶え果てない清水に、どうして亡き人の偈をだけでも留めなかったのだろう。

発音の読み:たえはてぬ / しみずになどか / なきひとの / げおだに / とどめざりけむ

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光源氏 から 朝顔の姫君 へ

咲花に
移るてふ名は
つゝめども
おらで過うき
けさの朝がほ

咲く花に移るという名は包んでも、折らずに過ぎる今朝の朝顔よ。

発音の読み:さくはなに / うつるというなは / つつめども / おらですごうき / けさのあさがほ

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朝顔の姫君 から 光源氏 へ

朝霧の
はれ間もまたぬ
けしきにて
花に心を
とめぬとぞ見る

朝霧の晴れ間も待たない景色で、花に心を留めないとぞ見ます。

発音の読み:あさぎりの / はれまもまたぬ / けしきにて / はなにこころお / とめぬとぞみる

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光源氏 から 朧月夜 へ

朝ぼらけ
霧たつ空の
まよひにも
過うかりける
妹がかど哉

朝ぼらけ、霧立つ空の迷いにも、過ぎ難かった妹の門であることよ。

発音の読み:あさぼらけ / きりたつそらの / まよいにも / すぎうかりける / いもがかどかな

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朧月夜 から 光源氏 へ

立どまり
霧のまがきの
過うくは
草の戶ざしに
さはりしもせじ

立ち留まり、霧の籬の過ぎ難くは、草の戸ざしに障りもしません。

発音の読み:たちどまり / きりのまがきの / すぎうくは / くさのとざしに / さわりしもせじ

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光源氏 から 光源氏 へ

まづみしも
忘れぬ物を
こりずまに
身もなげつべき
宿の藤なみ

まず見た時も忘れない物を、懲りずに身も投げたい宿の藤波よ。

発音の読み:まずみしも / わすれぬものお / こりずまに / みもなげつべき / やどのふじなみ

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斎宮 から 斎宮 へ

曉の
別はいつも
露けきを
これは世にしらぬ
おきの空かな

暁の別れはいつも露が多いのに、これは世に知らない沖の空であることよ。

発音の読み:あかつきの / わかれはいつも / つゆけきお / これはよにしらぬ / おきのそらかな

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宇治の中の君 から 薫 へ

徒に
わけつる道の
露しげみ
むかしおぼゆる
秋の空哉

いたずらに分け来た道の露の茂み、昔が思われる秋の空であることよ。

発音の読み:いたずらに / わけつるみちの / つゆしげみ / むかしおぼゆる / あきのそらかな

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兵部卿宮(匂宮) から 宇治の中の君 へ

見なれぬる
中の衣と
たのめしを
我身にしめて
恨つるかな

見慣れた中の衣と頼みにしたのを、我が身に占めて恨みつるかな。

発音の読み:みなれぬる / なかのころもと / たのめしお / わがみにしめて / うらみつるかな

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狭衣の君 から 狭衣の君 へ

思ひきや
むぐらのかどを
行過て
草のまくらに
たびねせむとは

思いもしなかった、葎の門を行き過ぎて草の枕に旅寝しようとは。

発音の読み:おもいきや / むぐらのかどお / ゆきすぎて / くさのまくらに / たびねせむとは

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寝覚の上 から 寝覚の上 へ

こぎ歸り
おなじ湊に
寄舟の
なぎさを夫と
しらずや有けむ

漕ぎ帰り、同じ湊に寄る舟の、渚を夫と知らずにいたのだろうか。

発音の読み:こぎかえり / おなじみなとに / よするふねの / なぎさおつまと / しらずやありけむ

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寝覚の少将の君 から 寝覚の上 へ

めぐり逢む
おりをもまたず
限とや
思ひはるべき
ふゆのよの月

巡り逢う折をも待たず、限りとや思い晴らすべき冬の夜の月よ。

発音の読み:めぐりあわむ / おりおもまたず / かぎりとや / おもいはるべき / ふゆのよのつき

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寝覚の中将 から 寝覚の上 へ

今宵たに
かかはなれたる
月を見て
又やは逢む
めぐり逢よを

今宵だに、こう離れた月を見て、またやは逢うだろうか、巡り逢う世を。

発音の読み:こよいだに / かかはなれたる / つきおみて / またやはあわむ / めぐりあうよお

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一の宮 から 一の宮 へ

絕ぬべき
契にかへて
おしからぬ
命をけふに
かぎりてしかな

絶えるべき契りに代えて、惜しくない命を今日に限ってしまいたい。

発音の読み:たえぬべき / ちぎりにかえて / おしからぬ / いのちおきょうに / かぎりてしかな

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将門 から 浜松中納言 へ

吹はらふ
嵐にわびて
淺ぢふに
露殘らじと
きみにっつたへよ

吹き払う嵐に侘びて、浅茅生に露が残らないと君に伝えよ。

発音の読み:ふきはらう / あらしにわびて / あさじゅうに / つゆのこらじと / きみにっつたえよ

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浜松中納言 から 将門 へ

嵐吹
淺ぢがすゑに
をく露の
消かへりても
いつかわすれむ

嵐吹く浅茅が末に置く露の、消え返ってもいつか忘れようか。

発音の読み:あらしふく / あさじがすえに / おくつゆの / きえかえりても / いつかわすれむ

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寝覚の上 から 寝覚の中将 へ

なからふる
命をなとて
いとひけむ
かたるゆふべも
あれはありけり

長らうる命をどうして厭いけむ、語る夕べもあればあったのだ。

発音の読み:ながらうる / いのちおなどて / いといけむ / かたるゆうべも / あればありけり

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寝覚の中将 から 寝覚の上 へ

消残る
身もつきもせず
うらめしき
あらば又うき
折も社あれ

消え残る身も尽きもせず恨めしい、あればまた憂き折もこそあれ。

発音の読み:きえのこる / みもつきもせず / うらめしき / あらばまたうき / おりもこそあれ

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寝覚の上 から 寝覚の上 へ

ねざめせし
昔のとも
忘られて
けふのまどろみに
ゆく心かな

寝覚めした昔の友も忘れられて、今日のまどろみにゆく心であることよ。

発音の読み:ねざめせし / むかしのとも / わすられて / きょうのまどろみに / ゆくこころかな

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藤原俊蔭 から 藤原俊蔭 へ

たぐひなく
浮身をいとひ
捨しまに
君をも世をも
そむきにしかな

類なく浮き身を厭い捨てた間に、君をも世をも背いたのだなあ。

発音の読み:たぐいなく / うきみおいとい / すてしまに / きみおもよおも / そむきにしかな

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藤原俊蔭 から 藤原俊蔭 へ

ひとりしも
明さじどおもふ
床のうへに
おもひもかけぬ
淚の音かな

一人しも明かさじと思う床の上に、思いもかけない涙の音であることよ。

発音の読み:ひとりしも / あかさじとおもう / とこのうえに / おもいもかけぬ / なみだのおとかな

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四の君 から 女中納言 へ

春のよも
見るわれからゝの
月なれば
心づくしの
影となりけり

春の夜も見る我からがの月なれば、心尽くしの影となったことだ。

発音の読み:はるのよも / みるわれからがの / つきなれば / こころづくしの / かげとなりけり

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女中納言 から 四の君 へ

うへにきる
さよの衣の
袖よりも
人言れぬをば
たゞにやはきて

上に着る小夜の衣の袖よりも、人言わぬをばただにやは着て。

発音の読み:うえにきる / さよのころもの / そでよりも / ひといわぬおば / ただにやはきて

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在原業平 から 在原業平 へ

色〳〵の
花を折ては
見ゆれども
ひとりきくには
かいなかりけり

色々の花を折っては見えるけれど、一人菊には甲斐がなかった。

発音の読み:いろいろの / はなおおりては / みゆれども / ひとりきくには / かいなかりけり

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在原業平 から 在原業平 へ

菊の花
かひあるをも
有けるを
さしもなとかは
言くだしけむ

菊の花、甲斐ある物をもあったのを、さしもどうして言い下しけむ。

発音の読み:きくのはな / かいあるおも / ありけるお / さしもなどかは / いうくだしけむ

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小野小町 から 小野小町 へ

色見えて
移ふものは
世の中の
人の心の
はなにぞ有ける

色見えて移う物は世の中の人の心の花にぞあった。

発音の読み:いろみえて / うつうものは / よのなかの / ひとのこころの / はなにぞありける

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小野小町 から 小野小町 へ

わびぬれば
身を萍の
根を絶て
誘ふ水おらば
いなむとぞ思ふ

侘びぬれば身を浮草の根を絶えて、誘う水があれば往なむと思う。

発音の読み:わびぬれば / みおうきくさの / ねおたえて / さそうみずあらば / いなむとぞおもう

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小野小町 から 小野小町 へ

思ひつゝ
ぬればや人の
見へつらん
夢と知りせば
さめざらましを

思いつつ寝ればや人の見えつらん、夢と知りせば覚めざらましを。

発音の読み:おもいつつ / ぬればやひとの / みえつらん / ゆめとしりせば / さめざらましお

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和泉式部 から 和泉式部 へ

物おもへば
澤のほたるも
我身より
あくがれ出る
玉かとぞ見る

物を思えば沢の蛍も我が身よりあくがれ出る玉かとぞ見る。

発音の読み:ものおもえば / さわのほたるも / わがみより / あくがれいずる / たまかとぞみる

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藤原保昌 から 和泉式部 へ

おく山に
たぎりて落る
瀧つ瀨に
玉どるばかり
物な思そ

奥山にたぎりて落ちる滝つ瀬に、玉取るばかり物を思うな。

発音の読み:おくやまに / たぎりておつる / たきつせに / たまどるばかり / ものなおもいそ

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小式部内侍 から 小式部内侍 へ

もろともに
昔の下には
くちずして
埋れぬなを
みるぞかなしき

諸共に昔の下には朽ちずして、埋もれぬ名を見るぞ悲しい。

発音の読み:もろともに / むかしのしたには / くちずして / うもれぬなお / みるぞかなしき

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藤原定頼 から 赤染衛門 へ

はる〳〵ど
野中にみゆる
わすれ水
絕まゝをなげく
ころかな

遥々と野中に見える忘れ水、絶え間を嘆く頃かな。

発音の読み:はるばると / のなかにみゆる / わすれみず / たえままおなげく / ころかな

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赤染衛門 から 藤原定頼 へ

よそにても
見るに心は
なくさままで
たちこそまされ
かもの河なみ

よそにても見るに心は慰めまで、立ちこそ勝され鴨の川波。

発音の読み:よそにても / みるにこころは / なくさまで / たちこそまされ / かものかわなみ

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赤染衛門 から 赤染衛門 へ

戀しさを
忍びもあへず
空蟬の
うつし心も
なくなりけり

恋しさを忍びもあえず、空蝉の移し心も無くなった。

発音の読み:こいしさお / しのびもあえず / うつせみの / うつしこころも / なくなりけり

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藤原定子 から 藤原定子 へ

夜もすがら
契りしことを
忘れずは
こひむ涙の
道ぞゆかしき

夜もすがら契りし事を忘れずは、恋いむ涙の道ぞ床しい。

発音の読み:よもすがら / ちぎりしことお / わすれずは / こいむなみだの / みちぞゆかしき

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藤原定子 から 藤原定子 へ

野べまで
心ひとつは
かよへども
我みゆきとは
しらずやあるらん

野辺まで心一つは通えども、我が御幸とは知らずやあらむ。

発音の読み:のべまで / こころひとつは / かよえども / わがみゆきとは / しらずやあらむ

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無名草子へ