ATAWI 古典文学JAPANESE CLASSICS, AT YOUR PACE

源氏物語 第24帖

胡蝶 こちょう

あらすじ

六条院の春の御前で唐様の舟遊びが催され、翌日は秋好中宮の御読経に鳥蝶の装束の童べが花を供える。西の対の玉鬘には蛍兵部卿宮をはじめ言い寄る人々の文が集まり、源氏は柏木の結ぼほれたる文を見て右近を諭す。呉竹と橘の歌の応酬のうちに、源氏の玉鬘への思いは親の情を越えはじめ、姫君は煩悶する。

この帖の人物

場面 第1–5場面

第1場面春の御前の舟遊び弥生の二十日過ぎ、六条院の春の御前で源氏が唐様の舟を用意し、若い女房たちを乗せて南の池を漕ぎ回る。中島の景色を眺めながら一日を暮らし、舟の上の若き人びとは山吹を詠んだ歌を言い交わす。第2場面釣殿の夜遊び暮れ方に舟は東の釣殿に寄せられ、若き人びとが装束を尽くして珍しい楽を奏する。夜には篝火をともして親王や上達部も楽器を取り交わし、夜通しの遊びのうちに兵部卿宮が「青柳」を歌い、源氏も言い加える。第3場面兵部卿宮のかざし夜も明けきらぬ頃、中宮は鳥のさえずりをもの隔てて嫉ましく聞く。西の対の姫君・玉鬘の評判が高まる中、妻を亡くして独り住まいの兵部卿宮は藤の花をかざして源氏に懸想の歌を贈り、源氏は返歌で宮を切に引き留める。第4場面胡蝶の舞秋好中宮の御読経の日に、紫の上の心遣いで鳥と蝶に扮した童たちが花を仏に供え、舟の舞楽が優美に繰り広げられる。紫の上から胡蝶の贈歌が届くと、中宮はそれを紅葉への返しと微笑み、女房たちも春の威勢を讃える。中宮は胡蝶に誘われる心を返歌に詠み、春と秋の競い合いは華やかに締めくくられる。第5場面西の対への文舟遊びの見物の女房たちへの贈り物の話から、玉鬘のもとへ多くの文が届く日々が描かれる。源氏は蛍兵部卿宮の文を笑って眺め、玉鬘に返事を勧めるが、玉鬘は遠慮がちである。

場面 第6–10場面

第6場面結ぼほれたる文源氏は玉鬘のもとに届いた文々を見比べるうち、細く結んだ唐紙の文を開き、柏木の歌を見つける。文の返し方について右近に注意を与え、玉鬘の婿選びや実父への知らせ方をめぐって思い巡らすうち、源氏は玉鬘に母のように思ってほしいと語りかけるが、思うことは言い出せないまま嘆いて過ごす。第7場面呉竹の歌源氏は御前近くの呉竹の若やかな姿に立ち止まり、竹の子に玉鬘を重ねて歌を贈る。玉鬘は若竹に寄せて返歌し、源氏のありがたい心遣いに感謝しつつも、実の親でないことが知られるのを恐れて慎ましく思う。第8場面紫の上への評判源氏は玉鬘をますます可愛いと思い、紫の上にもその人柄を語って褒める。紫の上が源氏の昔の心の様子をほほ笑んで指摘すると、源氏は面倒に思って言葉を途切らせ、心の中で人の推し量りや自分の心のほどを思い知る。第9場面橘の香の夜雨上がりの夕方、源氏は橘の実を手に玉鬘のもとを訪れ、亡き夕顔への思いを歌に託して玉鬘への恋心をほのめかす。玉鬘は返歌で身の上を案じつつ戸惑い、源氏は親心を装いながらも思いを募らせ、夜更けを待たずに帰っていく。第10場面朝の文源氏の真意を知った玉鬘は、思いもよらない世の中に嘆き、気分まで悪くしてしまう。翌朝届いた源氏の文には若草の歌が添えられ、玉鬘は素っ気ない返事だけを返すが、かえって源氏の恨みを招き、玉鬘の悩みは深まっていく。

出典・底本

底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第24冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。