源氏物語 第33帖
藤裏葉 ふじのうらば
あらすじ
柏木は女二の宮との冷えた結婚に苦しみ、源氏の教えを受ける。内大臣は柏木を婿に迎えようと藤の宴を催すが、その夜、夕霧は柏木の計らいで雲居雁と結ばれ、長年の恋が実る。雲居雁は参内して寵愛を受け、源氏は四十の賀を控えて太上天皇に准ずる位を得る。秋、六条院への行幸で朱雀院・冷泉帝と歌を交わし、栄華の絶頂が描かれる。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面冷えた結婚と極楽寺のほのめかし柏木は女二の宮との冷えた結婚の中で思いに苦しみ、源氏へ言い寄る機会を窺う。源氏も柏木の並々ならぬ決意を案じ、ほのめかす機会を探っている。三月二十日、大宮の忌日に極楽寺へ参詣した際、柏木は源氏の袖を引き寄せ、恨みの解けることをほのめかす。第2場面藤の花の贈歌と源氏の許し内大臣は長年の思いを遂げようと心弱くなり、藤の花の盛りに柏木を招く歌を贈り、柏木も返歌する。柏木は源氏に文面を見せて許しを得、心ときめかせながらも不安を抱くが、源氏から立派な衣装一式を賜る。第3場面内大臣邸の藤の宴柏木が内大臣邸を訪れると、内大臣の子息たちが迎え、内大臣は北の方や女房たちに柏木の見事さを語ってから対面する。藤の花を愛でながらの酒宴で、内大臣は来訪の遅さを恨む歌を柏木に贈り、柏木と夕霧が返歌を詠み交わす。第4場面宿直所の逢瀬と河口の贈答宴も夜更けとなり、酔いを装った夕霧は柏木に宿直所を求め、柏木の計らいで雲居雁の部屋へ導かれて、長年の思いが遂げられる。翌朝、二人は催馬楽『河口』に寄せて歌を交わし、内大臣に朝寝を咎められる。第5場面夕霧の文と源氏の教え、灌仏の賑わい夕霧の後朝の文が届くが、雲居雁は返事を出しかね、居合わせた内大臣が文を見てしまう。六条の源氏は柏木を前に、女の道で乱れなかった態度を褒めつつ、内大臣の気性を説いて奢らぬよう諭す。灌仏の日、内大臣邸は源氏と柏木を迎えて賑わう。
場面 第6–10場面
第6場面賀茂祭の桟敷と柏木の贈歌賀茂祭の日、六条院の一行は簡素ながら格別の威勢で参詣し、帰りには桟敷から祭を見物する。源氏は、中宮の母御息所が車を押しのけられた昔のことを思い出し、残された人々の運命のはかなさを語る。近衛司の使を務める藤典侍の出仕の支度のもとへ柏木が訪ねて歌を贈ると、典侍は車に乗る間際にも巧みに切り返して応える。第7場面雲居雁の参内と尼君の添い参り雲居雁の参内には、北の方ではなく祖母の尼君が後見として添うことが決まる。輦車を許されるほどの格式で参内し、帝の深い寵愛を受けた姿を見て、内大臣も源氏もそれぞれ本意を遂げたと安堵する。第8場面准太上天皇の位と雲居雁への菊の歌翌年四十になる源氏の賀の準備が朝廷を挙げて始まり、その秋、源氏は太上天皇に准ずる位を得て、柏木は中納言に進む。源氏は、大輔の乳母が「六位宿世」とつぶやいた宵を思い出し、色の移った菊に歌を添えて雲居雁に贈り、雲居雁が返歌する。第9場面三条殿への移徙と老木の歌夕霧と雲居雁は三条殿に移り住み、庭や遣水を整えて昔を懐かしみ、真清水を詠み交わす。源氏が訪れて老木の歌を詠み、宰相の乳母も双葉の松の歌を添えた。第10場面六条院への行幸と管弦の遊び神無月、六条院に冷泉帝の行幸があり、朱雀院も臨席して世に珍しい盛儀となる。紅葉と菊のもとで管弦の遊びが催され、朱雀院・源氏・冷泉帝が歌を交わす。帖は中納言の笛と弁少将の唱歌の描写で閉じられる。
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第33冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を、国立国会図書館デジタルコレクションの原画像(IIIF)と照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。