源氏物語 第46帖
椎本 しいがもと
あらすじ
宇治に隠棲する八の宮と、その娘たち大君・中の君をめぐる物語の始まり。兵部卿宮の初瀬詣の中宿りで宇治を知った薫は、八の宮に請われて姫君たちの後見を引き受ける。宮の死後、薫と兵部卿宮の文や歌が宇治に届き、姉妹は亡き父を偲びながら静かに暮らす。夏、薫が姫君たちを垣間見て心を動かされるところで終わる。
この帖の人物
場面 第1–5場面
第1場面兵部卿宮の初瀬詣如月の二十日、兵部卿宮は初瀬に詣で、帰途に宇治へ宿る。川向かいの八の宮の邸から聞こえる笛の音に昔を思い、山懐に籠もる姫君たちのことを思う。第2場面宇治の宮邸の贈答八の宮から文と歌が届き、兵部卿宮が返歌する。薫らが宮邸を訪れて管弦に興じ、薫は花の枝に歌を添えて贈り、中の君の代筆による返歌が届く。第3場面絶えぬ文と思慕都へ戻った兵部卿宮は宇治へ文を送り続け、中の君が応じる。姫君たちは大君二十五歳、中の君二十三歳。その秋、薫は中納言に進む。第4場面宮の遺言と昔語り七月、薫が久しぶりに宇治を訪れると、八の宮は死後の姫君たちの後見を託す。夜更けに宮は宮中の昔を語って女の身の上を説き、薫は箏の琴の音を切に所望する。第5場面別れの歌宮は「われなくて草の庵は荒れぬとも」の歌を残して仏前に去り、薫が返歌する。薫は夜更けに帰京し、心細げな宮の様子を思い続ける。
場面 第6–10場面
第6場面山寺への出立と宮の死秋深く、八の宮は念仏三昧に入るため姫君たちに訓戒を残して山寺へ発つ。やがて病の知らせが届き、八月二十日、宮は亡くなる。第7場面阿闍梨の諫めと薫の弔問阿闍梨は亡き宮との対面の願いを諌め、後のわざを執り行う。薫は弔問して後のことを託し、九月の宇治は時雨に暮れる。第8場面宮の文と鹿の歌兵部卿宮から弔いの文と鹿の歌が届き、大君にせがまれた中の君が返歌を書く。翌朝、薫からも鹿の歌が届くが、中の君は返事をためらう。第9場面御忌明けの訪問御忌が明けて薫が訪れ、大君と几帳越しに語り合う。薫の「色変はる浅茅」の独詠に、中の君が返歌を言いさして消える。第10場面弁の君の身の上古人は大納言の乳母子で左中弁の子、姫君たちの後見役であった。その問はず語りを聞き、薫は帰りを惜しむ。
場面 第11–15場面
第11場面雁の歌と兵部卿宮帰り際、雁の声に薫は歌を詠む。兵部卿宮は対面のたびに姫君たちのことを話題にし、姉妹はひそかに思い悩んで年を越す。第12場面雪の夜の姉妹の歌人目の絶えた宇治で年が暮れ、阿闍梨から炭が届く。姉妹は亡き宮を偲んで雪の歌を交わす。第13場面新年の訪問と懸橋の歌新年、薫が雪を踏み分けて訪れ、大君と語り合う。中の君は「雪深き山のかけはし」の歌を書き送り、薫が返歌する。第14場面椎が本の歌薫は宿直人の嘆きを聞き、亡き宮の部屋を開けて塵を払い、「立ち寄らむ蔭と頼みし椎が本」の歌を詠む。第15場面蕨と桜の贈答春、姉妹は蕨と芹の歌を交わす。花盛り、兵部卿宮が桜の歌を送って迫り、中の君が返歌する。
場面 第16–17場面
出典・底本
底本:北村季吟編『湖月抄』延宝元年[1673]刊・国立国会図書館蔵 本別3-1 第46冊。本文画像:所蔵機関の公開資料。延宝元年(1673)刊『湖月抄』の大字本文を原画像とOCRで照合した独自編集本文です。通行字体・現行仮名へ写し、濁点・句読点を補い、反復符を展開しています。発音の読みと独自訳を添え、補った主語などは〔 〕で示します。